近年、UdioやSuno.aiに代表されるAIを用いた音楽生成サービスが注目を集めています。ユーザーが入力した情報をもとに、AIが自動で音楽を生成してくれるこれらのサービスは、音楽制作の新たな可能性を切り開くものとして期待されています。今回はそんな2つのサービスについて執筆時点での規約をもとに紹介します。
UdioとSuno.aiについて
Udioは2024年4月にパブリックベータ版がリリースされたばかりの新しいサービスです。現在は無料で月1200曲まで作曲可能で、高品質な音楽生成、特に人間っぽいボーカルやライブ感のあるサウンドが特徴です。日本語歌詞にも対応しており、1回の生成で33秒の曲を2パターン作成できます。
一方、Suno AIは2023年12月にリリースされ、SNSで話題になった音楽生成AIサービスです。無料プランと有料プランがあり、最新バージョンのV3では、無料ユーザーが1日最大20曲まで生成可能になりました。
両サービスの利用規約を見ると、ユーザーが提供した学習用データの知的財産権は基本的にユーザーに帰属するものの、サービス提供のためにライセンスを付与する形になっています。生成された音楽の知的財産権については、Udioは自社に帰属するとしているのに対し、Suno.aiは有料プランユーザーに譲渡するとしている点が大きな違いです。
商用利用に関しては、Udioはユーザーに自身の生成コンテンツの商用利用を認めていますが、サービス自体の直接的な商用利用は禁止しています。一方、Suno.aiは有料プランユーザーに生成音楽の商用利用を許諾しています。
ただし、日本の著作権法の観点からは、AI生成物をそのまま著作物として保護できるかは明確ではありません。現行法上、著作物は人間の思想又は感情の創作的表現と定義されているためです。したがって、ユーザーがAIの生成した素材に何らかの創作的関与を加えない限り、生成音楽に著作権が発生しない可能性があります。
また、仮にAI生成音楽に著作権が認められたとしても、学習用データを提供したユーザーと、学習モデルを開発したサービス提供者のどちらに権利が帰属するかは1つの論点になるでしょう。この点、Udioは生成物の権利を自社に保持し、Suno.aiは有料ユーザーに譲渡するという方針の違いが見られました。
加えて、ユーザー間で利用条件が異なることによる混乱の恐れや、サービス提供者自身による商用利用の是非など、まだ検討すべき課題は多く残されています。
AIの発展に伴い、既存の法的枠組みでは対応しきれない新しい論点が次々と生まれている現状があります。イノベーションと利用者保護のバランスを取りながら、ステークホルダー間の利害を調整し、柔軟な法的対応を模索していく必要があるでしょう。
技術の進化のスピードに法整備が追いつかない部分もありますが、ユーザーとしては、各サービスの利用規約をしっかりと確認し、最新の法制度の動向にも注意を払いながら、適切な利用を心がけることが肝要だと言えます。
サービス比較表
比較項目 | Udio | suno.ai |
---|---|---|
リリース時期 | 2024年4月 | 2023年12月 |
料金体系 | 現在は無料。月1200曲まで作曲可能 | 無料プランと有料プランあり |
特徴 | 高品質な音楽生成。人間っぽいボーカル、ライブ感のあるサウンド。日本語歌詞対応。1回の生成で33秒の曲を2パターン作成可能 | 最新のV3では無料ユーザーが1日最大20曲生成可能。高音質化、対応言語増加、音楽カテゴリー増加などの改良 |
学習用データの知的財産権 | ユーザーに帰属するが、Udioにライセンス付与 | ユーザーに帰属するが、suno.aiにライセンス付与 |
生成音楽の知的財産権 | Udioに帰属 | 有料プランユーザーに譲渡。無料プランはsuno.aiに帰属 |
商用利用 | ユーザーは自身の生成コンテンツを商用利用可。ただしサービス自体の直接的な商用利用は禁止 | 有料プランユーザーに許諾。無料プランは不可 |
まとめ
AIによる音楽生成は、新たな創作の形を生み出す画期的な技術である一方、生成物の法的位置づけについてはまだ不明確な部分が残されています。
UdioとSuno.aiの利用規約の比較から見えてきたのは、AI生成音楽の知的財産権帰属や商用利用の可否について、各社の方針に違いがあるということです。
法制度の整備が待たれる中、ユーザーは最新の規約や法改正の動向を注視しつつ、適切な利用を心がける必要があります。
AIの発展に伴う新しい法的論点について、関係者間で活発な議論が交わされていくことを期待したいと思います。
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